8月25日に第10回真健省Buフォーラムを実施しました。
今回の登壇者は、大阪の株式会社野澤工務店代表取締役の野澤万里様にご登壇いただきました。フォーラムの内容は、野澤代表による自邸パッシブハウスリノベーションの事例をもとに発表いただき、その後参加者によるグループディスカッションが行われました。当日は「高性能リノベーションへの取り組み」「集客・学ぶ姿勢と行動」をテーマに10チームが議論を交わし、現場が直面するリアルな課題と打開策が共有されました。
自邸をパッシブハウスへ ― 10年間の学びの軌跡
発表を行った野澤代表は、ある学びの場への参加をきっかけに、この10年間で設計思想・海外の建築文化・環境への向き合い方など多方面から刺激を受けてきたといいます。地域の資源循環を軸にした設計思想との出会いで設計者への先入観を覆され、海外視察ではパッシブハウスが確認申請と同等の当たり前の基準として根付いている実情や、木材使用量とCO₂固定量を競い合う建築文化に強い衝撃を受けました。さらに、産業廃棄物処理業者の石坂産業株式会社への視察では、逆境を乗り越え地元雇用とリサイクル率の向上によって信頼を回復してきた歩みに触れ、「自分は今まで何をやってきたのか」という大きな気づきを得たと振り返ります。こうした経験から、「現地に足を運び自分の目で確かめる」「顧客に説明できるレベルまで理解してから試す」「失敗は人のせいにせず自ら分析する」という独自の方法論を確立しました。
発表の中心は、築約20年の自邸を対象にしたパッシブハウスのリノベーション実践報告です。「まだ使える建物を壊したくない」との思いから新築ではなくリノベーションを選択しました。そこで他地域での家を見学したことをきっかけに、着工直前でプランを全面的にやり直しました。
結果として、リノベーション向けの緩和基準ではなく新築と同等の基準でのパッシブハウス認定取得を狙える数値を達成しました。夏は外気温35〜40度近い日でも室内温度は安定し、冬は無暖房でも20〜22度を維持するなど、実測データに基づく高い居住性能を実証しています。「この経験を地域の家づくりに一つひとつ落とし込み、下の世代へ引き継いでいきたい」と発表を締めくくりました。
10チームが議論 ― 普及の壁と処方箋
続くグループディスカッションでは、10チームが「高性能リノベーションへの取り組み」または「集客・学ぶ姿勢と行動」について意見を交わしました。
複数のチームから、性能向上に取り組んでいても数値として提示できない、予算面で顧客に断られるといった課題が挙がりました。主導権が施主の一方にある場合、目に見える水回りリフォームが優先され性能改修が後回しにされる現状も共有されました。処方箋として繰り返し語られたのが「体感」と「納得」というキーワードです。体感は見学会での五感を通じた実感、納得は数値の見える化や身近な例えでの説明を指します。エリアを絞り込みファンを増やす展開の提案もありました。
「高性能」の基準自体もチームによって見解が分かれ、活発な議論となりました。数値の根拠を示せなければ訴求できないという認識で一致しつつ、数値だけでなく「暮らしの提供」を重視する姿勢が核心との結論に至ったチームもあります。中古買取リノベーションでは愛着が生まれにくく新築に流れやすい点、確認申請の複雑さから安易な提案がしにくい点も悩みとして共有された一方、高性能リノベーション済み中古物件の買取再販は、若い購入層へのアプローチとして有効との事例も紹介されました。
優れた施工をしていても外部への発信ができていないという課題は複数チームで共通し、自分の言葉で強みを発信することの重要性が語られました。「現場が止まるのが怖くて外部学習に出られない」という小規模工務店の悩みが共有される一方、施主向けイベントの企画が採用につながった事例も紹介されました。組織づくりの工夫や、工務店・流通業者双方をつなぐハブへの期待も語られ、業界全体で横のつながりを広げていく機運がうかがえました。
浮かび上がったのは、「高性能」を数値だけでなく暮らしの体感として伝える工夫と、学びとつながりを積み重ねていく姿勢の重要性です。今回の対話が、それぞれの現場での次の一歩につながることが期待されます。
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2026/09/01
8月25日に第10回真健省Buフォーラムを実施しました
